飲酒による自走式乗用カート事故からの教訓

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 2009年9月5日兵庫県篠山市のゴルフ場でおきた飲酒したプレーヤーによるカート事故は、ゴルフ場とプレーヤーへ様々な教訓を残しました。そしてその事故をめぐる利害関係者による訴訟は、2017年7月14日大阪高裁に於いて2審判決が出るものの、未だ終着点を見出だせない状況で、今しばらく時間の経過が必要な様に思われます。

 このカート事故が原因で感覚消失、不完全四肢麻痺などの後遺障害を負ったプレーヤーB氏が原告となり、事故時にカートを運転していたA氏を被告とした損害賠償裁判は、2013年5月14日福岡地裁小倉支部に於いて、A氏がB氏へ約2億円の賠償金を支払う事で決着しております。

 ところでA氏が負担する約2億円は、A氏の父親が加入していた全国共済農業協同組合(以下農協共済)の、「自動車共済契約」から支払われたのです。後日この支払に付いて農協共済は、昼食時にビールをプレーヤーへ提供したゴルフ場側にも、飲酒運転幇助の過失負担があるとして、今日まで争って来ております。

 その一つの形が、7月14日の大阪高裁2審判決です。この判決はゴルフ場による当該プレーヤーへ、注意義務を怠り酒類を提供したと言う過失を認めるも、その割合は限りなく小さいとして、農協共済による損害賠償金請求を棄却しております。

 この事故に関する様々な過去の報道から、ゴルフ場はプレーヤーへ昼食時にアルコール類を提供出来ないのではないか、と言う憶測が支配しておりました。しかしながら大阪高裁2審判決は、この様な憶測を払拭するに値するものとなったのです。

 ところでこの事故をゴルフ場全体で教訓化しておく為には、幾つかの留意すべき点があり、その内容を一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会は、下記の3点へまとめ上げております。
1、「乗用カート利用約款」の制定
2、「カート道」の整備と事故防止策検討
3、万が一の事故が発生した場合の補償制度

 紙面の都合上詳しくは述べられませんが、上記3の補償制度は喫緊の課題だと言えます。とにかくカート事故は無くて当たり前ですが、あってからその無策を嘆いても始まりません。